越:奴奈川姫は大国主に愛されたのか、追われたのか?|二つの伝承

奴奈川姫について、とても気になることがある。

中央の神話では、

大国主と奴奈川姫の恋

として語られる。

ところが地元・糸魚川には、まるで反対の伝承が残っている。

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『古事記』では大国主が求婚する

『古事記』では、八千矛神=大国主が高志の沼河比売のもとを訪れ、求婚する。

『出雲国風土記』にも、大国主と奴奈宜波比売が結ばれたとする伝承がある。

こちらだけを見ると、

出雲の大国主
×
高志の奴奈川姫

という婚姻神話になる。

ところが地元では「追われる姫」

糸魚川市が公開している奴奈川姫伝承には、

「出雲族に攻められた」

という話が残る。

さらに別の伝承では、大国主と能登へ渡った奴奈川姫が一人で帰郷し、大国主側の使者に追われ続け、最後には茅原の中から姿を消したとされる。

自害したとする伝承や、姫ヶ淵へ身を投げたとする話も残っている。

これは「仲の良い夫婦」という物語とはかなり違う。

婚姻神話の裏側に何がある?

そこで気になるのが、

婚姻=勢力の統合

という読み方。

高志の有力な女神・女王である奴奈川姫を、大国主が「娶る」。

中央側から見れば婚姻でも、地元側から見れば、

外から来た勢力によって土地を奪われた

という記憶だった可能性もある。

だから、

大国主に愛された奴奈川姫
出雲に追われた奴奈川姫

は、必ずしも全く別の話ではないのかもしれない。

同じ出来事を、

取り込んだ側
取り込まれた側

から語った二つの記憶だったとしたら。

最古層コシを考えるうえで、奴奈川姫の地元伝承はかなり重要な気がしている。

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