以前から、日本の「土公」という存在が気になっている。
土公神、宇治土公、土地や方位の禁忌。
コシや猿田彦周辺を調べる中でも何度か出てきたものの、
結局「土公」って何なんだ?
というところが、まだ自分の中できれいに整理できていない。
そんな中、まったく別方向から調べていた白族(ペー族)の祭祀に、
土公・土母
が出てきた。
しかも、それだけではなかった。
① 白族は土公・土母を祀る
② 土公・土母が五方を鎮める祭祀がある
③ 九宮・八卦を用いる
④ 五色五方+五龍という構造がある
⑤ 桃弓柳箭などの弓矢で凶神を祓う
思っていた以上に、
土公
+
方位
+
陰陽五行
+
龍
+
辟邪
が一つの祭祀の中にまとまっている。
自分の頭がパンクしないように(笑)、この記事ではまず全体像だけを残しておく。
それぞれの細かい内容については、別の記事に分けて整理することにした。
① 白族は「土公・土母」を祀る
雲南・大理周辺の白族には、新しい家を建てたあとなどに、
土地を鎮め、家の平安を願う祭祀
が残っている。
そこに登場するのが、
土公・土母。
関西大学の張麗山氏による土公信仰の研究では、大理白族の祭祀の中に土公・土母が登場することが紹介されている。
また、名古屋大学博物館には、雲南省周城で使われた「土公土母」と記された白族の紙馬も収蔵されている。
単に文献上の名前だけではなく、祭祀具としても確認できる存在だった。
→ 詳細は「白族の『土公・土母』とは?」で整理。
② 土公・土母が「五方」を鎮める
白族の土公祭祀で繰り返し出てくるのが、
東・南・西・北・中央
という五方。
剣川の「奠土」儀礼では、土公・土母が祭祀者とともに五方を巡り、
五方の凶神を射て鎮める
という場面まである。
つまり土公・土母は、単なる「土の神」というより、
土地を方位ごとに整え、家の空間を鎮める存在
として働いているように見える。
→ 詳細は「白族の土公祭祀と五方・八卦・九宮」で整理。
③ 中央には「九宮・八卦」
さらに祭壇には、
九宮八卦図
が使われる。
祭祀では、この九宮八卦を中心として、
東・南・西・北・中央
の五方を順番に拝し、供物を供え、土地を鎮めていく。
つまり、
九宮・八卦
+
五方
+
土公・土母
が一つの儀礼空間の中に存在している。
かなり明確に方位思想・術数思想の世界に入っている。
④ 五色五方+五龍
さらに白族の「安龍奠土」には、
東方=青帝・青龍
南方=赤帝・赤龍
中央=黄帝・黄龍
西方=白帝・白龍
北方=黒帝・黒龍
という神々が登場する。
これは、
東=青
南=赤
中央=黄
西=白
北=黒
という、五行思想でおなじみの五色五方そのもの。
しかも各方位に、
龍
が対応している。
白族を調べていて、
「なぜ白族は“白”なのか?」
という疑問から五行が気になっていたところだったので、この祭祀構造はかなり気になる。
→ 詳細は「白族の五色五方と五龍王」で整理。
⑤ 桃弓柳箭で「五方の凶神」を祓う
そして一番びっくりしたのが、
桃弓柳箭
という言葉。
剣川白族の奠土儀礼では、弓矢を使って、
東方
南方
西方
北方
中央
の凶神を順番に射る。
資料には、
「桃弓柳箭射凶神」
という表現まで出てくる。
桃といえば、日本神話ではイザナギが黄泉国で桃を投げ、八雷神や黄泉軍を退ける話がある。
ここが同じ由来なのかは別として、
白族
+
土公
+
五方
+
桃
+
弓矢
+
邪を祓う
という組み合わせは、今後もう少し掘っておきたい。
→ 詳細は「白族祭祀の『桃弓柳箭』」で整理。
今のところのメモ
白族については、
「白」という民族名
「ポツォ/Pe-tsö」という自称
土公・土母
五方
九宮八卦
五色
五龍
桃と柳
と、気になる要素が一気に増えてきた。
もちろん、
白族の祭祀=そのまま日本神話の原型
という話ではない。
ただ、
白族文化を五行・方位祭祀という視点から見直すと、日本側で気になっていた要素と共通するものがかなり出てくる。
ということは、ひとまず覚えておきたい。
日本の土公神との比較については、白族側を整理してから別記事にまとめる。
参考
・張麗山『東アジアにおける土公信仰と文化交渉』関西大学博士論文
