坐摩:土公とイカスリ神は同じ系統?|土地・井戸・竈・庭を祀る地霊祭祀

気比神宮の「土公」を調べていて思い出したのが、以前から気になっていたイカスリ神(坐摩神)。

どちらも、

土地そのものを守る神・霊

という性格がかなり似ている。

今回は、土公とイカスリ神の共通点をメモしておく。

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土公とは?

一般に土公神は、土・土地を司る神とされる。

陰陽道では、季節によって居場所を移すとされ、

春=竈
夏=門
秋=井戸
冬=庭

などにいると考えられた。

その場所の土を不用意に動かすと祟るとされ、土木・建築・土地を掘る行為とも深く関係する。

つまり土公神は、

単なる「土」の神というより、人が暮らす土地・屋敷の空間を支配する地霊

として見ることができる。

気比神宮にも「土公」がある

気比神宮には現在も土公と呼ばれる聖地が残る。

神宮公式では、

伊奢沙別命が最初に降臨した場所

とされ、

神籬・磐境

という、社殿以前の古い祭祀形態を残しているという。

つまり、

神を建物の中に祀る以前に、土地そのものを神の座として祀っていた場所

と見ることができる。

ここでいう「土公」が、後世の陰陽道の土公神と完全に同じものかは分からない。

ただ、

土地そのものを聖地・神域として扱う

という性格はよく似ている。

イカスリ神とは?

大阪の坐摩神社に祀られる坐摩大神(イカスリノオオカミ)は、五柱の神の総称。

生井神
福井神
綱長井神
阿須波神
波比祇神

を合わせて坐摩神と呼ぶ。

『古語拾遺』では、坐摩神について、

「大宮地之霊」

と記されている。

つまり、

宮殿が建つ土地そのものの霊

という意味。

また「イカスリ」は、

居所知(イカシリ)

から転じた語と考え、

居住地を領知・守護する神

とする説がある。

坐摩五神は「屋敷一式」を守る神?

坐摩五神を見ると、かなり面白い。

生井神・福井神・綱長井神

は、いずれも井戸・水に関係する神。

阿須波神

は、

足場・宅地の基礎

を表すとする説がある。

そして波比祇神には、

竈神
庭の神
屋敷神

とする説がある。

さらに、

宅地の境界

を表す神とする説もある。

つまり坐摩五神は、

井戸
水
土地
基礎
竈
庭
境界

という、

人が暮らす屋敷空間そのもの

を守る神々として見ることができる。

土公神と坐摩神の共通点

ここで土公神と並べると、かなり似ている。

土公神

・竈
・門
・井戸
・庭
・土地


坐摩神

・井戸
・水
・宅地
・基礎
・竈
・庭
・境界

ほぼ同じ生活空間をカバーしている。

つまり両者とも、

山や川のような大自然の神というより、「人が住む場所」を守る地霊・屋敷神

という性格が強い。

特に気になる「竈」と「庭」

坐摩五神の一柱である波比祇神については、

竈の神
庭の神

とする説がある。

一方、土公神も、

春は竈
冬は庭

にいるとされる。

つまり、

竈
庭

という同じ場所が、土公神と坐摩神の両方に出てくる。

竈は単なる料理設備ではなく、

火
食
家
祖霊
生活の中心

に関わる場所。

庭も、家の外と内の間にある境界空間として見ることができる。

どちらも、古い屋敷祭祀ではかなり重要な場所だった可能性がある。

「大宮地之霊」と「土公」

坐摩神は、

大宮地之霊

つまり、

宮の土地そのものの霊

とされる。

一方、気比神宮の土公は、

伊奢沙別命が降臨した土地そのものを聖地として残した場所

とされる。

両者を並べると、

土公
=神が宿る土地そのもの

坐摩神
=宮地そのものの霊

となり、

人格神になる以前の「土地そのものを祀る祭祀」

という共通点が見えてくる。

阿須波神・波比祇神は大年神の系譜にもいる

さらに面白いのが、

阿須波神
波比祇神

が、『古事記』では大年神の系譜にも登場すること。

大年神は、稲・穀物・年の実りに関係する農耕神。

つまり、

土地・屋敷神である坐摩神

と、

農耕・食物神である大年系

が同じ神を共有していることになる。

ここでも、

土地
家
竈
食
農耕

が一つの祭祀世界としてつながってくる。

越前にも坐摩五神が祀られる

坐摩五神は大阪の坐摩神社だけにいるわけではない。

越前の足羽神社にも、

生井神
福井神
綱長井神
阿須波神
波比祇神

が祀られている。

越前には、

気比神宮の土公

があり、

同じ地域に、

大宮地の霊につながる坐摩五神

も存在する。

この重なりも気になるところ。

同じ神なのか?

今のところ、

土公神=坐摩神

と直接同一視する史料は見つかっていない。

ただ、

土地そのものを祀る
井戸を守る
竈を守る
庭を守る
境界を守る
家・宮が建つ場所を守る

という祭祀内容はかなり近い。

そのため、

同じ古い地霊・屋敷神祭祀が、地域や時代によって「土公」「坐摩神」など別の名前で整理された可能性

は一度考えてみたい。

まとめ

土公とイカスリ神を並べると、

土公
=土地・土・竈・門・井戸・庭

坐摩神
=土地・井戸・基礎・竈・庭・境界

↓

どちらも
「人が住む場所そのもの」を守る地霊・屋敷神

という共通点が見えてくる。

特に、

竈
井戸
庭
境界

が重なっているのが気になる。

今後は、

土公
坐摩神
竈神
クナド神
地主神
屋敷神

あたりが、古い祭祀の中でどのようにつながっていたのかを追ってみたい。

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