秦氏に見られる雷・牛・猿|夔(キ)との共通点について。
<参考>
・塚田敬章氏「帰化人 秦氏」
・塚田敬章氏「縄文の逆襲3」
・塚田敬章氏「帰化人の真実4」
<関連記事>
・「民族・部族」についての記事一覧
秦氏に見られる「楚」の要素
塚田氏は、秦氏を「呉系楚人」としている。
つまり、もともとの祖系は呉につながる一方で、その後楚へ入り、楚の文化や信仰的な要素を強く持つようになった集団、という見方になる。
その秦氏に見られる「楚」の要素として、塚田氏が繰り返し取り上げているのが、
雷・牛・猿
といった特徴。
そして、これらの要素をまとめて持つ存在として出てくるのが、
夔(キ)
だった。
塚田氏は、楚と同族とされる夔について、
楚蛇・猿・牛・青・雷電・石・木・楽器
などの要素を挙げ、これらを楚そのもののトーテム的な特徴として見ている。
牛 ― 天之日矛・須佐乃男
塚田氏は、天之日矛を呉系楚人・堂谿氏につながる祖神とみなし、その系統を秦氏と結びつけている。
<参考>
・塚田敬章氏「帰化人の真実、1
・塚田敬章氏「堂谿氏(秦氏の源流)」
そのうえで『古事記』には、天之日矛が渡来する話の中で、牛を殺して食べようとしていた男をめぐる逸話がある。
男が牛に食料を載せて谷へ入ろうとする
→ 天之日矛が「牛を殺して食べるつもりだろう」と疑う
→ 男は「農夫に食料を運んでいるだけ」と弁明
→ それでも許されず、玉を差し出す
<参考>
・古事記の天之日矛の説話について─牛耕を中心に─
塚田氏はこの話を、
牛を聖獣とする楚系の文化・トーテム
と結びつけている。
また、秦氏と関係づける須佐乃男についても、後世の牛頭天王との結びつきを含め、牛の要素を見ている。
つまり塚田説では、
秦氏に関わる神々・伝承
↓ 牛を重視する要素
↓ 楚系の牛トーテム
という線が引かれている。
猿 ― 大山咋神
猿の要素で重要になるのが、大山咋神(オオヤマクイ)。
大山咋神を祀る松尾大社は、秦氏が一族の氏神として信仰した神社として知られている。
その大山咋について塚田氏は、
大山咋=夔
と見ている。
夔には猿の要素があり、塚田氏は日吉・松尾の大山咋信仰についても、秦氏・呉系楚人とのつながりの中で捉えている。
つまり、
秦氏
↓ 松尾大社
↓ 大山咋
↓ 夔
↓ 猿
というつながりになる。
雷 ― 「ハタ」と火雷神
塚田氏は、秦氏の「ハタ」という音そのものにも雷との関係を見ている。
雷には、
はたた神
という呼び方があり、「はたはた」と鳴る雷の音などから、塚田氏は「ハタ」と雷との関係を考えている。
また、火雷神(ホノイカヅチノカミ)についても秦系の雷神として扱っている。
一方、夔も中国の伝承では雷鳴と結びつく存在。
そのため塚田説では、
秦氏=ハタ
↓ 雷・はたた神
↓ 火雷神
↓ 夔の雷の要素
という対応も見られる。
まとめ
塚田氏が秦氏を「呉系楚人」と見るうえで、楚とのつながりを示す材料の一つになっているのが、
雷・牛・猿
という要素。
秦氏に関係するとする神や伝承の中に、
・牛 ― 天之日矛・須佐乃男
・猿 ― 大山咋
・雷 ― ハタ・火雷神
といった特徴を拾い、それらを雷に見られる特徴と重ねている。
つまり塚田氏の見方では、
秦氏
↓ 雷・牛・猿
↓ 夔
↓ 楚系の文化・トーテム
という複数の線が重なることで、
「呉」を祖系に持ちながら、「楚」の文化要素も強く持つ秦氏=呉系楚人
という見方につながっている。
参考ページ
・塚田敬章氏「帰化人 秦氏」
・塚田敬章氏「縄文の逆襲3」
・塚田敬章氏「帰化人の真実4」
<関連記事>
・「民族・部族」についての記事一覧

