古代の神名や人名を調べていると、たびたび「ミケ」という音が現れる。
まず押さえておきたいのが、日本語としての御食(ミケ)・御饌(ミケ)である。
「ミケ」は神や天皇の食物
國學院大學の「万葉神事語辞典」では、「みけ(御食)」について、
神への供物・神饌、または天皇の食物
と整理されている。
語としては、
ミ=畏敬・讃美を表す接頭語 ケ=食事・食物
と解釈される。
つまり一般的には、
御(ミ)+食(ケ)=ミケ
という構造になる。
「ケ」は食物を表す古い言葉
「ケ=食物」という要素は、「ミケ」だけに現れるわけではない。
たとえば、
大御食(オオミケ)
も天皇の食事を表し、ここでも「ケ」は食事の意味とされている。
また、気比大神の「気比」についても、神名研究では、
ケ=食物 ヒ=霊
として、「食物の霊」を表すという説が紹介されている。
古代の「ケ」は、現在の「食べ物」という単純な意味以上に、生命を支える食物そのものと深く関わる言葉だったように見える。
「御食つ国」という表現もある
『万葉集』には「御食つ国」という言葉も見える。
これは、天皇家・朝廷に食料を献上する国を指す表現で、淡路・志摩・伊勢などがそのように詠まれている。
特に海産物などを献上する土地との関係が強い。
ここから見ると、「ミケ」は単なる食事名ではなく、
食物を差し出す土地 食物を司る神 王権へ食物を供給する仕組み
にも広がる言葉だったことがわかる。
「御食」は神名にもなる
「ミケ」は神格化もされている。
代表的なのが、敦賀・気比神宮の御食津大神である。
また、「御食」を含む名前は、
豊御食炊屋姫 中臣御食子
など、人名にも見える。
つまり「ミケ」は、古代日本ではかなり重要な祭祀語だったと考えてよさそうである。
では「ミケ」という音は、すべて御食なのか?
ここからが今回気になっているところ。
日本語内部では、
ミ=御 ケ=食
できれいに説明できる。
ただし塚田氏は別の文脈から、土家族と結びつけるビッカ(ミッケ)が、
ミカ・ミケ
へ転訛したのではないかとしている。
そうなると、日本に残る「ミケ」という音のすべてについて、
最初から「御+食」という意味を持っていたのか
という疑問も残る。
もともと存在した「ミケ」という音に、意味の通る「御食」という表記や解釈が重なった例はなかったのか。
これは現時点では答えを出さず、神名・人名・地名をもう少し集めてから考えたい。
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