「ミケ」という音を調べていたら、思わぬところに二人もいた。
神武天皇の兄弟である。
兄は御毛沼命=三毛入野命
『古事記』では、鵜葺草葺不合命と玉依毘売の子として、
五瀬命 稲氷命 御毛沼命 若御毛沼命
の四兄弟が挙げられている。
第三子の御毛沼命(ミケヌノミコト)は、『日本書紀』では三毛入野命、異伝では三毛野命とも表記される。
表記は、
御毛 三毛
と異なる。
それでも「ミケ」という音は残っている。
神武自身も「ミケヌ」
さらに面白いのが第四子である。
『古事記』では、
若御毛沼命
の別名として、
豊御毛沼命 神倭伊波礼毘古命
が挙げられている。
この神倭伊波礼毘古命が、後の神武天皇である。
つまり、
兄=御毛沼(ミケヌ) 弟・神武=若御毛沼/豊御毛沼(ミケヌ)
となる。
神武兄弟には「ミケ」の名を持つ人物が二人いる。
一般的には「ミケ=食物」
御毛沼命の名について、一般的には、
ミ=敬称 ケ=食物
と解釈される。
「ヌ」については「主」とする説や「野」の転化とする説などがある。
國學院大學の神名データベースでは、鵜葺草葺不合命の四人の子はいずれも稲または食物にちなむ名を持ち、穀霊の継承を表しているとする説が紹介されている。
そう考えると、
稲氷 御毛沼 若/豊御毛沼
と、たしかに食物・穀物を思わせる名前が並ぶ。
五瀬命まで含めて考えたい
現在、別に調べているのが長兄五瀬命(イツセ)である。
五瀬命についても、名前を稲・穀霊と結びつける解釈がある。
一方で、奈良・葛城・紀伊北部に残るハニ・丹・イツ・五瀬などの地名・祭祀との関係も気になっている。
この話まで入れると「ミケ」から外れるため、五瀬命については別記事で整理する。
ここでは、
神武兄弟全体の名前に、稲・食物・穀霊を思わせる要素が集中している
ことだけ覚えておきたい。
それでも「ミケ」という音が気になる
御毛沼命を「御食の主」と解釈すれば、神名としてはきれいに説明できる。
ただ別に、塚田氏は、
ビッカ(ミッケ) → ミカ・ミケ
という民族・地名音の変化を想定している。
しかも筑後の三毛を「越系の地名」と分類している。
そうなると、
三毛入野命の「三毛」
まで、本当に「御食」だけで読んでよいのかが気になってくる。
神武兄弟の「ミケ」は、
食物・穀霊を示す祭祀名
だったのか。
それとも、
「ミケ」と呼ばれる集団・系統を示す音
まで重なっているのか。
まだ判断はできないが、これは今後追っておきたい。
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