古代の神名や人名を見ていると、やたらと気になる「ミミ」。
神八井耳、神沼河耳、手研耳、忍穂耳。
さらに『魏志倭人伝』には、投馬国の官として弥弥(ミミ)という名称まで出てくる。
以前から、「ミミ」は単なる身体の耳ではなく、首長・豪族の称号だったのではないかという説がある。
そこへ最近、美豆良や椎髻について調べているうちに、
なぜ古代の髪型は、わざわざ耳の周囲を強調するのか
ということまで気になってきた。
「ミミ」は首長を意味した?
古代の「耳」は、姓の制度が整う以前の首長・豪族への敬称だったとする説がある。
『魏志倭人伝』の投馬国では、
官=弥弥(ミミ)
副=弥弥那利(ミミナリ)
と記されている。
また記紀にも、
神八井耳
神沼河耳
手研耳
忍穂耳
など、「ミミ」を持つ名が複数残る。
もし「ミミ」が首長を示す語だったとすれば、
これらの名前は単に「耳」という身体部位を意味するのではなく、
首長・支配者を示す古い称号
を含んでいた可能性がある。
美豆良は「耳」を強調する髪型
そこで気になるのが、古代男性の代表的な髪型である美豆良。
美豆良は、髪を左右に分け、
耳の横でまとめる
ことが大きな特徴になる。
上げ美豆良なら、耳の横に輪状の髪束を作る。
下げ美豆良なら、耳の横から髪束を垂らす。
どちらにしても、
髪型そのものが耳の位置を強調する
デザインになっている。
一つにまとめるだけならもっと簡単なはずなのに、わざわざ左右二つに分けて、耳の位置に髪の造形を置く。
この「耳を見せる・耳を囲う」という形にも、何か意味があったのではないか。
塚田敬章氏の「耳=犬トーテム」説
塚田敬章氏は、「耳」を犬・狗トーテムの象徴として読む。
犬という動物を特徴づける部位として「耳」があり、
それが首長名のミミにもつながったのではないか、という考え方である。
塚田氏の整理では、
犬 → 耳
という象徴関係があり、
首長称号としての「ミミ」も、単なる偶然ではないと見る。
この説を採るなら、
耳を強調する美豆良
も、単なる髪型ではなく、
所属・身分・トーテムを示す文化記号
だった可能性まで考えたくなる。
「耳に何かが入る」伝承も気になる
さらに気になるのが、
耳に何かが入る
という神話や伝承。
たとえば、雀が耳に飛び込む話。
もし「ミミ」が首長を示す語だったなら、
耳に雀が入る
という描写も、
単なる身体的な奇談ではなく、
ある勢力・トーテムが首長へ入る、取り込まれる
といった象徴表現だった可能性も考えられる。
もちろん、ここはまだ思いつきの段階。
ただ、
ミミ=首長
美豆良=耳を強調する
神名にミミが多い
耳に動物が入る伝承がある
という材料を並べると、
「耳」は古代社会で、単なる身体部位以上の意味を持っていたように思えてくる。
今のところのメモ
今の時点では、
ミミ=首長称号
という説を中心に、
耳そのものが古い身分・氏族・トーテムの記号だったのではないか
という点が気になっている。
特に美豆良については、
なぜ髪を二つに分けるのか
だけでなく、
なぜ耳の横に髪を配置するのか
という視点も必要そう。
「ミミ」という言葉と、美豆良の「耳を強調する形」は、
まだ別々の話として見た方がよさそうだが、
どこかでつながる可能性は残しておきたい。