「洞(ホラ)」という地名について。
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洞(ホラ)を名に持つ神社
以前、
・洞(ホラ)地名はなぜ岐阜と岩手に偏る?|谷・集落・開墾説をメモ
という記事で、「洞」をホラ・ボラと読む地名について調べた。
「洞」は、谷・窪地・谷頭などを表す地形語として使われる一方、岐阜県や岩手県では地名として特に多く残っている。
そこで気になったのが、
「洞」を名前に持つ神社もあるのだろうか?
ということ。
全国を調べてみると、少なくとも現在確認できた範囲では、いくつか興味深い神社が見つかった。
確認できた「洞」を名に持つ神社
まず、今回確認できた主な神社をざっくり並べておく。
| 神社名 | 所在地 | 読み | 主な祭神 |
| ① 洞神社 | 岐阜県羽島市 | ホラジンジャ | 大己貴神 |
| ② 大洞神社 | 岐阜県関市板取 | オオボラジンジャ | 天照大神・大洞大神 |
| ③ 牧ヶ洞神社 | 岐阜県高山市清見町 | マキガホラジンジャ | 菊理姫命・伊弉諾尊・伊弉冉尊 |
| ④ 洞神社 | 滋賀県大津市国分 | ホラジンジャ | 高龗神 |
同じ「洞」を含む神社でも、
・そのまま「洞神社」と呼ばれるもの
・「大洞」「牧ヶ洞」など地名らしき語を冠するもの
・「大洞大神」のように「洞」が祭神名にも現れるもの
があり、どうも全部を同じタイプとして扱うことはできなさそうだ。
また、滋賀県大津市の洞神社では、古い棟札に「保羅(洞)権現御社」という表記が残っている。
この「保羅」と「洞」の関係については、別記事で「保良(ホラ・ボラ)」地名とあわせて追う。
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・
なお、これは「洞を名に持つ神社の全国完全一覧」ではない。
小さな神社や境内社、合祀された旧社、旧称・通称まで含めれば、まだ見つかる可能性がある。
今回は、現在確認できた神社の中から「洞(ホラ・ボラ)」を考えるうえで気になった例を先に整理している。
① 岐阜県羽島市|洞神社
【洞神社】〒501-6301 岐阜県 羽島市 舟橋町7丁目549
岐阜県羽島市舟橋町には、そのまま「洞神社(ほらじんじゃ)」という神社がある。
<祭神>
・大己貴神(オオナムチノカミ)
岐阜県神社庁では、創祀・由縁ともに「不詳」とされている。
つまり現在のところ、
なぜ「洞神社」と呼ばれているのかは分からない。
ここはかなり気になる。
「洞」が神名なのか、地名に由来するのか、それとも別の由来があるのか。
現時点では判断できないため、ひとまず「洞神社という社名が実際に残っている例」として記録しておく。
② 岐阜県関市板取|大洞神社
【大洞神社】〒501-2901 岐阜県 関市 板取4354
岐阜県関市板取には、
大洞神社(おおぼらじんじゃ)
がある。
<祭神>
・天照大神
・大洞大神
の二柱。
ここで特に気になるのが、
「大洞大神」
という神名。
岐阜県神社庁の由緒には、もとは「明神」と呼ばれ、明治9年(1876)に改号されたこと、さらに「大洞社」の本社二宇が並んでいたことが記されている。
一方で、その伝承については不明とされている。
そのため、
大洞大神とは何者なのか。
そもそも古くから「大洞大神」という神名だったのか。
「大洞」という土地・集落の神が、後に祭神名として整理されたものなのか。
今のところ分からない。
ただ、「洞」が単なる神社所在地ではなく、「大洞大神」という神名の形にまで入っているのは覚えておきたい。
③ 岐阜県高山市|牧ヶ洞神社
【牧ヶ洞神社】〒506-0101 岐阜県高山市清見町牧ケ洞2960
飛騨の高山市清見町には、
牧ヶ洞神社(まきがほらじんじゃ)
がある。
<祭神>
・菊理姫命
・伊弉諾尊
・伊弉冉尊
など。
住所も、
高山市清見町牧ヶ洞字洞口
となっている。
こちらは「洞神社」という単独名ではなく、牧ヶ洞という地名を冠した神社と見るのが自然そうだ。
由緒では、寿永年間に当地へ来た人物やその家臣らが、それぞれ本居の神を勧請し、後に白山社へ合祀したという里伝が紹介されている。
つまり、この神社については少なくとも現在確認できる由緒から、
「洞という神を祀った神社」
とは言えない。
むしろ、
「牧ヶ洞という集落に祀られてきた神社」
として見る方がよさそうだ。
これはこれで重要である。
「洞」が地形だけを指した言葉なのか、それとも人が暮らす小さな地域・集落を指す単位として使われていたのかを考える材料になるかもしれない。
④ 滋賀県大津市|洞神社
【洞神社】〒520-0844 滋賀県大津市国分2丁目17−17
そして、今回いちばん気になったのが滋賀県大津市国分の洞神社(ほらじんじゃ)。
現在は近津尾神社の境内社となっている。
滋賀県神社庁や『滋賀県神社誌』によれば、国分新田にあった洞神社は、明治末期に近津尾神社へ遷祀・合祀された。
<祭神>
・高龗神(タカオカミノカミ)
とされている。
高龗神 は水に関わる神である。
さらに面白いことに、この洞神社から近年見つかった棟札には、現在とは異なる表記が残っていた。
宝暦8年(1758)の棟札には、
「保羅(洞)権現御社」
明治21年(1888)の棟札には、
「洞大権現」
と記されている。
・
・
ここで、
保羅=洞
という対応が実際の神社資料から出てくる。
これはかなり重要なデバッグポイントかもしれない。
「洞」だけを検索すると、ホラ地名を取りこぼす?
これまで「洞(ホラ)」地名を調べていると、不思議なことがあった。
岐阜県や岩手県では「洞」という漢字が大量に見つかるのに、西日本では急に少なくなる。
もちろん、本当に分布が偏っている可能性もある。
ただ、滋賀の洞神社では、
保羅(洞)
という表記が確認できた。
さらに滋賀県には「保良(ホラ)」という地名があり、宮古島にも「保良(ボラ)」という地名が残っている。
つまり、
「ホラ/ボラ」という音を探す場合、「洞」という漢字だけを検索していては足りないのではないか。
という疑問が出てきた。
洞
保良
保羅
これらがすべて同じ語源だと考えるのは、まだ早い。
地域ごとにまったく別の由来を持つ可能性もある。
ただ少なくとも滋賀の洞神社では、「保羅」と「洞」が同じ社を示す表記として使われた実例がある。
そこで「保良・保羅」については、別記事でまとめて調べることにした。
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・ 「保良(ホラ・ボラ)」という地名はどこにある?|洞・保羅との関係を探す
今のところ見えていること
今回確認できた神社だけでも、「洞」の使われ方は一様ではなさそうだ。
洞神社というそのままの社名。
大洞神社・大洞大神という形。
牧ヶ洞神社のように集落名を冠したもの。
そして滋賀では、
保羅(洞)権現 → 洞大権現 → 洞神社
という表記の変化まで確認できる。
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一方、洞地名が非常に多い岩手県では、今回の調査では岐阜県ほど分かりやすい「洞神社」が見つからなかった。
ここも少し気になる。
洞という地名が多い地域と、洞を社名に使う地域は必ずしも一致しないのかもしれない。
ただし、小祠・旧社名・合祀社・地域での通称まで含めると状況が変わる可能性があるため、岩手については引き続き調べたい。
今のところ、
「洞=特定の神」
と考えられる材料はない。
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まずは、
洞という地名・集落名と、その土地で祀られてきた神との関係
を一社ずつ見た方がよさそうだ。
そして「洞」という漢字だけではなく、
ホラ・ボラという「音」から追い直す。
どうも、次はそっちが必要そうである。
参考
・岐阜県神社庁「洞神社」
・岐阜県神社庁「大洞神社」
・岐阜県神社庁「牧ヶ洞神社」
・滋賀県神社庁「近津尾神社」
・近津尾神社「神像等宝物」
・近津尾神社「神社の運営」
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