スズメ|「鷦鷯(ミソサザイ)」はスズメ?記紀で二つの鳥が重なる謎

」と書いて「サザキ」と読む仁徳天皇の名前(和風諡号:大鷦鷯オホサザキ天皇)。

しかし記紀を見ていくと、(スズメ)と鷦鷯(ミソサザイ)は別の鳥としても登場する。

この二つは同じ象徴なのか?

それとも似ているからこそ区別された存在なのか?

気になったことをメモしておく。

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「雀」と「鷦鷯」は、そもそも別の鳥

まず前提として、

(スズメ)

と、

鷦鷯(ミソサザイ/サザキ)

は別の鳥。

これは記紀の中でも確認できる。

特に分かりやすいのが、『日本書紀』にある天稚彦の葬送

ここでは鳥たちが葬儀の役割を分担し、


→ 米をく役

鷦鷯(サザキ)
→ 哭者(泣く役)

として登場する。

つまり同じ説話の中に、

鷦鷯が別々に存在している。

少なくとも『日本書紀』では、

鷦鷯

として扱われているわけではない。

それなのに「雀」をサザキと読む

ところが、ここから話がややこしくなる。

仁徳天皇は、

『日本書紀』では

大鷦鷯尊(オオサザキ)

『古事記』では

大雀命(オオサザキ)

と記される。

つまり、

鷦鷯=サザキ

を、

」という字でも表している。

さらに、

武烈天皇=小長谷若命(ワカサザキ)

崇峻天皇=長谷部若命(ワカサザキ)

など、

皇統周辺では「」という字をサザキと読む例が繰り返し現れる。

ここで出てくる疑問が、

別の鳥だと分かっているのに、なぜ鷦鷯を「」と書いたのか?

ということ。

「同じもの」ではなく「近いもの」だった?

ここで考えたいのが、

鷦鷯は、完全に同じ象徴だったのか?

という問題。

生物として別なのはもちろんだけれど、

古代の神話や氏族の象徴としても、

まったく別の存在だったとは限らない。

たとえば、

同じ鳥を象徴とする文化圏の中でも、

を象徴とする集団

と、

鷦鷯を象徴とする集団

が存在した可能性もある。

つまり、

同じもの

というより、

近縁の象徴を持つ別グループ

というイメージ。

逆に、

「よく似ているけれど別物」だからこそ、意図的に使い分けられていた

という可能性も気になる。

「似た別物=偽物」として使われている?

もう一つ気になったのが、

鷦鷯の「代用品」や「偽物」のような存在として使われていないか?

ということ。

ただ、今のところ記紀の中には、

鷦鷯の偽物として登場し、正体を見破られる

といった直接的な説話は見当たらない。

むしろ天稚彦の葬送では、

鷦鷯も、それぞれ正式な役割を与えられている。

そのため現時点では、

本物と偽物

という関係より、

近い領域に属しながら役割の違う二つの鳥

として見た方が合いそうに思う。

天若日子の葬儀では「雀=碓女」

ここでもう一度気になるのが、

『古事記』の天若日子の葬儀。

ここでは、

が、

碓女(ウスメ)

という役を担当する。

碓女とは、

臼で米をく女性

つまり、



米・穀物

碓女(ウスメ)

という組み合わせになっている。


そして「ウスメ」と聞いて思い出すのが、

天宇受売命(アメノウズメ)

もちろん、

碓女=天宇受売

とそのまま同一視することはできない。

ただ、

ウスメ/ウズメ

という音に加えて、

どちらも祭祀の場で役割を持つ女性像として登場することは気になる。

アメノウズメを「雀」と見る場合、どちらの雀なのか?

ここで最初の疑問に戻る。

もし、

アメノウズメと

の関係を考えるなら、

その「」は、

スズメそのもの

なのか。

それとも、

皇統名などで「」と書かれる、

サザキ/ミソサザイ側まで含んだ象徴

なのか。

ここは分けて考える必要がありそう。

たとえば、

スズメ
→ 米・穀物・碓女

サザキ/ミソサザイ
→ 皇統名・少彦名の羽衣・葬送の哭者

と見ると、

現時点では少し違う役割が見えている。

一方で、

」という字がサザキにも使われる

ことを考えると、

この二つが古代日本でまったく無関係な象徴だったとも言い切れない。

「雀」という字が二つをつないでいる?

個人的に一番気になるのはここ。

記紀には、

鷦鷯を区別する場面

がある。

それなのに、

大鷦鷯尊

大雀命

という表記が存在する。

つまり記紀の世界では、

鷦鷯は「違う」と知りながら、それでも重ねることができる存在だった

ようにも見える。

これは単なる漢字表記の問題なのか。

それとも、

二つの鳥を象徴とする文化・氏族・祭祀集団のあいだに、何らかの近さがあった

のか。

あるいは、

本来は別だった二つの象徴を、後の系譜や物語の中で重ねた

のか。

このあたりは今後も追ってみたい。

今のところの整理

ひとまず現在は、

(スズメ)側>

・天若日子の葬儀で碓女=米を搗く役
・米・穀物との関係
・碓女(ウスメ)と天宇受売(ウズメ)の音
・祭祀を担う女性との関係

鷦鷯(サザキ/ミソサザイ)側>

・仁徳天皇=大鷦鷯尊
・武烈天皇=稚鷦鷯尊
・少彦名神=鷦鷯の羽の衣
・天稚彦の葬送=哭者
・雀部(サザキベ)
・陵(ミササギ)との音の近さ

 

そして両者をつなぐ最大の謎が、

鷦鷯(サザキ)を「」と書くこと。

今のところ、

鷦鷯

と一つにしてしまうより、

別の鳥なのに、なぜ古代日本では重ねて表現できたのか?」オ族

と考える方が面白そう。

そして、

アメノウズメに関係する「」が、スズメだけを指すのか、それともサザキ/ミソサザイまで含む鳥の象徴なのか。

ここも引き続き追っておきたい。

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