侗族:日本のなれずし・いずしはどこに残る?|地域・魚種・祭礼一覧

侗族の酸魚と日本のなれずしを比べる中で、

「日本での、なれずし・ふなずし・飯寿司イズシ 文化が残っている地域」について調べてみた。

<関連記事>
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日本のなれずし・ふなずし・いずし

日本での、なれずし・ふなずし・いずし文化について調べてみると、全国どこにでも均等に残っているわけではない。

琵琶湖や河川の淡水魚を使う地域

日本海・太平洋の海魚を使う地域

米だけでなく麹や野菜も加える寒冷地

など、地域によってかなり違いがある。

・
・

しかも、

県全体に広がる文化

もあれば、

特定の川筋や集落に残る、かなり局地的な文化

もある。

今回は、侗族の酸魚と比較する中で確認した、日本各地の代表的ななれずし・いずしを一覧にしておく。

※全国すべてのなれずし・いずしを網羅した一覧ではなく、今回の比較調査で拾った代表例です。

日本のなれずし・いずし|地域・魚種・祭礼一覧

地域 代表例 魚 実際の広がり 祭礼・行事
滋賀
(県内全域)
ふなずし フナ 県内全域 神社祭礼の神饌
岐阜
(岐阜市・長良川流域)
鮎なれずし アユ 岐阜市を中心とする長良川文化圏 冬の保存食
兵庫
(但馬・香美町)
鮎なれずし アユ 矢田川中下流域 秋祭り・正月・祝い
三重
(県内各地)
なれずし アユ・コノシロ・サバ・サンマなど 伊勢・伊賀・北勢・東紀州など 神饌になる地域あり
和歌山
(有田地方中心)
サバなれずし サバ 有田地方中心。日高・紀南などにも別型あり 秋祭りの行事食
福井
(若狭・小浜)
サバなれずし サバ 小浜市内外海・田烏地区など 正月・ハレの日
石川
(県内全域)
かぶらずし ブリ 県内全域 正月食・豊漁安全祈願の起源説
新潟
(村上市)
飯寿司イズシ サケ 村上市 正月のごちそう
秋田
(沿岸中心)
ハタハタ寿し ハタハタ 沿岸を中心に県内全域 大晦日・正月の供物
北海道
(道内全域)
飯寿司イズシ サケ・ニシン・ホッケなど 道内全域 冬・年末年始の食文化

滋賀|琵琶湖の魚を使う「本なれ」の文化

滋賀のふなずしは、今回調べた中でもかなり重要。

農林水産省では、主な伝承地域を「県内全域」としている。

しかも、なれずしになるのはフナだけではなく、

ウグイ

ハス

モロコ

アユ

ビワマス

コイ

ドジョウ

など、琵琶湖水系のさまざまな魚。


PR 滋賀県 ふなずし

ふなずしは五穀豊穣を祈る神社祭礼の神饌として奉納される例も多い。

今回の比較では、

淡水魚+米+長期発酵+祭祀

が揃う重要地域として見ておきたい。

岐阜|長良川の鮎なれずし

岐阜の 鮎なれずしは、県全域というより岐阜市・長良川文化圏の食文化として見た方がよさそう。

塩漬けした鮎の腹に炊いた米を詰め、

木桶+米+鮎+竹皮+石の重し

で、数か月から長いものでは一年ほど発酵させる。


PR 岐阜県 鮎なれずし

侗族の酸魚と製法を比較するときには、滋賀と並んで特に重要な地域になりそう。

詳しい製法比較はこちらに分ける。

<関連記事>
・侗族の酸魚と日本のなれずしはどこまで似る?|製法を比べる

兵庫・但馬|矢田川の鮎なれずし

兵庫県では、県全体の文化というより、但馬・香美町の矢田川中下流域に鮎なれずしが残っている。

香住区・村岡区などでは古くから冬の保存食として作られ、

秋祭り

正月

祝いの場

などで食べられてきた。

製法も、

鮎を塩漬け
↓
米飯とともに漬ける
↓
重石をする
↓
一か月前後発酵させる

という形。

分布そのものは局地的だけれど、

淡水魚+米+発酵+秋祭り・正月

という点では、今回かなり気になる例。

三重|県内各地に残る、多様ななれずし

三重は少し特殊。

一つの魚を県全体で使うのではなく、

伊勢=アユ・タイ・アジなど

東紀州=アユ・サンマ・サバ・カマスなど

伊賀・北勢・中南勢=コノシロなど

と、地域の魚に置き換えながらなれずし文化そのものが県内各地に残っている。

さらに、神社の熟饌として作られるなれずしもある。

今回の一覧の中では、

「なれずし文化が土地ごとの魚へ適応した例」

として特に面白い。

また、祭祀との比較では三重はかなり重要なので、別記事でも詳しく見ておきたい。

<関連記事>
・薩歳祭祀と日本のなれずし神饌|「米+魚」は祭祀食だった?

和歌山|有田地方を中心とするサバなれずし

和歌山の代表は有田地方の サバなれずし。

古くから秋祭りなどの行事食として作られてきた。


PR 和歌山 サバなれずし

ただし、和歌山県内でも全部が同じではない。

有田・日高ではサバが目立つ一方、紀南などではサンマやアユなどを使う地域型もある。

つまり、

和歌山県全体=サバなれずし

というより、

有田地方を中心に、紀伊半島各地に地域型のなれずし文化が残る

と考えた方がよさそう。

福井・若狭|サバを使うなれずし文化

福井県小浜市の田烏地区など、若狭地方にはサバのなれずしが残っている。

若狭では古くからサバの加工・保存文化が発達しており、へしこを利用してなれずしを作る例もある。

米や麹を使って発酵させ、正月やハレの日に食べられてきた。

滋賀・岐阜の、

魚+米

というシンプルな型から少し材料が増え、

麹を使う「いずし」方向

との比較にも使えそうな地域。

石川|県内全域に広がるかぶらずし

石川のかぶらずしは、農林水産省でも明確になれずしの一種として扱われている。

主な伝承地域は県内全域。


PR 石川県 かぶらずし

塩漬けしたカブにブリを挟み、

米麹で作った甘酒

を使って発酵させる。

滋賀などの、

魚+塩+米

というシンプルな型とはかなり違う。

それでも、

魚+米由来の発酵文化が、日本海側でどのように変化したのか

を見るには重要なので、今回の一覧にも入れておく。

また、石川では「かぶらずしがないと正月が来ない」といわれるほど正月食として定着している。

起源については確定していないものの、金沢市金石の漁師が 豊漁祈願・安全祈願 の行事食として作ったとする説もある。

なお、同系統のかぶらずしは富山県西部にも伝わっている。

新潟・村上|サケを使う飯ずし

新潟県村上市には、サケを使う 飯寿司 が伝わる。

サケや野菜などを、

ご飯+麹

とともに低温で発酵させる。

主な伝承地域は村上市で、冬の保存食であると同時に正月のごちそうでもあった。

ここまで北へ来ると、

魚+米

だけではなく、

麹+野菜+低温発酵

が目立つようになる。

秋田|ハタハタ寿しと正月

秋田のハタハタ寿しは、沿岸部を中心に県内へ広がる。

米飯だけではなく、

麹

人参

ふのり

などを使う、飯寿司系の発酵食。


PR 秋田県 ハタハタ寿司

特に気になるのが、祭礼・年中行事との関係。

ハタハタ寿しは、大晦日や正月の食べ物としてだけでなく、供え物として使われてきた例もある。

今回の、

米+魚と祭祀

を考えるうえでは、南方のなれずしとは作り方が違っても外せない例だと思う。

<関連記事>
・薩歳祭祀と日本のなれずし神饌|「米+魚」は祭祀食だった?

北海道|道内全域の飯寿司文化

北海道の飯寿司 は道内全域に伝わる。

サケ

ニシン

ホッケ

ハタハタ

サンマ

など、各地で取れる魚を使う。


PR 北海道 鮭いずし


PR 北海道 ニシンずし


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魚と野菜を米麹とともに漬け、寒冷な気候を利用して低温発酵させるのが大きな特徴。

滋賀のふなずしなどとはかなり姿が違うけれど、

「魚を米の力で発酵保存する文化」が北方でどう変化したか

を見る比較対象として残しておきたい。

一覧にすると見えてくること

今回並べてみて、まず分かったのは、

「なれずし文化の分布」と「現在の都道府県境」はあまり関係ない

ということ。

滋賀・三重・石川・北海道のように広域へ広がる例もあれば、

岐阜=長良川流域

兵庫=但馬・矢田川流域

和歌山=有田地方中心

福井=若狭・小浜

新潟=村上

のように、特定の川・海・旧地域文化圏に強く残る例もある。

また、南から北まで全部同じ製法ではない。

・
・

ざっくり見ると、

淡水魚+米
滋賀・岐阜・兵庫但馬など

↓

地域の海魚+米
三重・和歌山など

↓

海魚+米+麹+野菜
石川・福井・新潟・秋田・北海道など

という違いも見えてくる。

ただし、これは、

滋賀 → 和歌山 → 北海道

という順番で伝播した、という意味ではない。

現時点では、

「魚+米」を基本にした発酵保存文化が、それぞれの土地の魚・気候・食材・祭礼に合わせて多様化している

ところまでを確認できた、としておきたい。

そして、今回の一覧でもう一つ目立ったのが、

神饌

秋祭り

正月

供え物

ハレの日

との結びつき。

単なる保存食ではなく、祭りや年中行事の中で特別な食べ物になっている地域がかなりある。

この部分は、侗族の薩歳祭祀との比較として別記事で詳しく見ていく。

<関連記事>
・薩歳祭祀と日本のなれずし神饌|「米+魚」は祭祀食だった?

また、各地の製法を、

魚種

米・糯米

麹の有無

桶・甕

葉

重石

発酵期間

まで並べてみると、侗族の酸魚とかなり似る地域もある。

こちらも別記事へ。

<関連記事>
・侗族の酸魚と日本のなれずしはどこまで似る?|製法を比べる

関連記事

・侗族(トン族)について|記事一覧

参考

・農林水産省「ふなずし 滋賀県」
・農林水産省「鮎なれずし 岐阜県」
・神戸新聞NEXT「矢田川のアユ使う伝統食「なれずし」」
・農林水産省「なれずし 三重県」
・農林水産省「なれずし 和歌山県」
・小浜市「なれずし」
・農林水産省「かぶらずし 石川県」
・農林水産省「飯ずし 新潟県」
・農林水産省「ハタハタ寿し 秋田県」
・農林水産省「飯寿司 北海道」

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